20代は必読『7割は課長にさえなれません』

7割は課長にさえなれません (PHP新書)
城繁幸さんの『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』に続く、三部作の最終作とのこと。今日が発売日だったので書店で購入、あっという間に読了した。自分にとって、日本の雇用問題を整理する上で非常によい本だった。20代は必読。30代後半から40代は精神状態がよいときに読もう。50代以上は・・・憤慨するかもしれないが、是非読んでほしい。以下、「若者」の分類に入る社会人の視点からのメモ。尚、個人の読書メモであり、本書の要旨を書いているわけではないのでご注意を。

今の日本社会は江戸時代と同じ

自分が就職活動をしている時によく言われていたのが就職に有利な資格は『新卒』だったが、それは今も変わらない。これから就職活動する人は、この一生で一回しか使えない新卒資格を活用して、会社を探し、決まった会社で一生を過ごす。決まらなかった人は非正規社員として一生を過ごす。著者はこの状況を江戸時代に喩えている。

強固で安定した身分制度を屋台骨とした江戸時代、社会は安定していたが発展はしなかった。一方でかつての"南蛮人たち"は大挙して黒船で押しかけてきて、危うく日本は植民地化される寸前だった。流動性を失った社会は、必ず停滞し、競争力や活力を失うのだ。
若者が夢をあきらめて組織に埋没していく姿は、江戸期の身分制そのままではないか。これを打破しないで日本の発展はありえない。

安定しているが発展しない社会は上位身分は現状維持であることに満足し、下位身分はあきらめている社会ではないかと思う。そして社会全体が緩やかに下降していても気づかないのかもしれない。ここでも著者がよい比喩を出している。

みんなが「ぶら下がって生きよう」と考えたときに、支えられる屋台骨など存在するのだろうか。だれかが屋台骨としてしっかり踏ん張ってこそ、ぶら下がる余地も生まれるのだ。みんなが頑張ることを放棄すれば、みんな仲良く落ちていくだけではないのか。

江戸時代のような日本の現状を打破するには、黒船を待つだけではなく、自らがアクションを起こさなければならないのだと感じた。

具体的なアクションとは

著者は、現状を打破するためには、財政、社会保障と行ったシステムを、持続可能なものに変える必要があると説明し、最後にこう書かれている。

そのためには現役世代、なかでも先の長い20、30代に気づかせなければならない。それが本書を書いた理由である。
政治とは、世相の反映にすぎない。「なんでこんなバカばっかりなんだ!」と思える政治家が多いなら、それだけ大衆がバカだということだ。若年層がいまより世代間闘争に積極的になりさえすれば、政治もきっと応えてくれるにちがいない。

要は選挙に行くことというわけである。小さな一歩かもしれないが、もっとも正攻法であり、着実なのかもしれない。日本の中から少しずつ変えていくことが理想だが、自分の中では、それが間に合わない可能性も考慮して、アクションを取るべきではないかと考えている。

著者からのストレートなメッセージ

コラムに書かれていた、著者からのメッセージともとれる文章を最後に紹介する。

若手のみなさんは、35歳を過ぎたあたりで、転職も昇給もできない袋小路に追い込まれるリスクがあることは認識しておくといい。そうなってから気づいても後の祭りである。

さらっと書かれているが、ストレートなメッセージが心にずしりと重くのしかかった。今月で27歳になるわけだが、後8年ですか。さぁ、がんばろう。

おまけ

主体性があってアクティブだけど組織には従順」なんて人材は、「美人でグラマーだけど清純」並に身勝手な思い込みにすぎず、人事部と男子中学生の妄想のなかにしか生息していない。

本書を読んでいて思わず吹いた箇所。確かにその通りだが、実際どこの企業もそんな人材を欲しがっているのだろう・・・。
 fujitaka