「ニコニコ動画が未来を作る ドワンゴ物語」でドワンゴ社内の空気を感じる

お休みなのでまた読了。本書はドワンゴの歴史を生々しく(?)描いたものであり、副題の「ドワンゴ物語」が正しいタイトルのように感じた。以下、読書メモ。

ドワンゴのケータイ進出劇

着メロ業界では後発ながら「いろメロミックス」をスタートし、高音質着メロ、着ラップ、着ボイス、そしてテレビCMへの進出をはたし独走状態になる。しかし、メジャーレーベルの着うたフルで赤字に陥り、最後にエイベックスとの業務・資本提携で希望が見える。この一連のストーリーはすさまじく、読んでいて非常におもしろかった。ケータイの進化に乗ってメジャーレーベルを出し抜いたが、また同じくケータイの進化でメジャーレーベルが着メロ会社を押しのける感じが、「ビジネスはルールのある戦争」であることを痛感した。この部分は実際に読んでほしいと思う。

開発と運用が一体となった企業

本書の中で、「開発と運営」や「大工さんと大家さん」といった比喩が出てくる。

とはいえ、運用はSo-netの側で、ドワンゴはアプリケーションの開発をしたにすぎない。運用側がさまざまな新しい企画を立てるのに合わせてアプリケーションを改造するのだが、そのたびに契約書を作り直さなければならず、手続きが実に面倒だった。おまけにしょせんドワンゴは受託開発先でしかないから、運用に口を出すわけにはいかない。「もっとこんなふうに運営すればおもしろいのに」と戀塚はあれこれアイディアを思いついたが、そうしたアイディアはJong Pluggedではあまり生かされないままに終わった。
この時の経験が、戀塚に「やっぱり開発と運営は一体じゃなきゃダメだ」という強い思いを抱かせることになる。

インターネットの企業には「大工さん」型と「大家さん」型があると言われている。大工さん型というのは、アプリケーションやウェブサイトを開発する企業。ものづくりは得意だけれども、サービスの運営にまでは踏み込まない。
そして大家さん型は、サービスの運営を得意とする企業。そのサービスを乗せるウェブやアプリケーションは自社で開発することもあれば、アウトソースすることもある。

IT分野の企業はどの立場なのかを考えてみてほしい。受託開発がほとんどの会社はモチベーションが下がることが懸念されるし、運営側であり、アウトソースしかできない企業は、技術力が不足してしまう恐れがある。日本のネット関連企業は開発と運営が分離し、加えて開発も技術力が乏しいとも言われている中、googleFacebookなど、世界の名だたる企業と競争するには、非常につらいなーと感じた。

おまけ

本書で出てくる「釣りバカ気分」の部分はマンガとして配布されている(内容の信憑性は不明)。実は持っているわけだが、本書と合わせて読むと相乗効果でおもしろい。

漫画家平沢たかゆき氏の『ゲームクリエイター列伝』新作を入手
http://www.kotaku.jp/2009/09/01_gc_retsuden.html